先に,センター試験の新課程移行(2015年1月から)について,
「現在高校1年生の人は浪人した場合影響がある」と述べましたが
(
http://nuclear-archive.seesaa.net/article/211203793.html),
実際にこの話を,現在高1の生徒さん及び保護者の方々にお伝えしたところ,
「じゃあ,是非とも現役で合格しなくては,という事ですね」といった反応を
大変多く頂きました.
それは一見ごもっともです…が,
現実には,
「現役で大学に進学する」という事は,
「現役時の大学受験で成功したか失敗したかにかかわらず,合格したところに進学する」という事を意味します.
それで満足するのか,納得するのか,という事を,まず考えてみて頂きたいのです.
公式のデータとして提示出来る情報が乏しいのですが(詳しくは後述),
筆者の知る限りでは,難関大学志望者が多い「上位進学校」においては,
現役進学率は50〜60%程度,あるいはそれを下回る高校が珍しくありません.
言うまでもなく,この種の進学校では大学進学率はほぼ100%ですから,
この数字は即ち,4割〜5割以上が浪人に回っているという事を意味します.
一方で,しばしば「二番手」と呼ばれるラインの進学校では,
むしろ逆に現役進学率がもう少し高くなっているケースも見られます.
これらは要するに,
「難関大学を目指す人ほど,『現役で受かった大学に進学する』のではなく
『納得いく成果を目指して浪人する』選択をとっている」
という事の表れであると考えられます.
実際,筆者の指導経験においても,ほとんどの生徒が(少なくとも当初志望では)
国公立または早慶を第1志望としており,
そして,実際に受験して得られた「合格」結果が第3志望以下のみだった場合には,
全員が浪人するという選択をしています.
さらに細かく述べると,統計的には「明治大学で不合格だったら浪人」
というラインがおおむね平均となっています.
志望学部等にもよりますが,「MARCH未満だったら現役で進学しない」
というのが,1つの基準になっていると見られるのではないでしょうか.
もちろん,個別指導を依頼される層ですから,
進学に対する意識は比較的高い人達だと考えて間違いないはずです.
そこで,これらの経験的な情報を裏付けるために,客観的なデータを探してみました.
…ところが,進学校でも「現役進学率」を公表しているところは
かなり少ないのが実情です.
在校生向けの内部資料などにはもう少し詳しく書かれているのかもしれませんが,
そのような資料を多くの進学校について入手する事は困難です.
そんな中で,容易に入手出来た資料として,「サンデー毎日 7.17号」の
「500高校 難関大『現役進学者数』ランキング」がありました.
この資料の数字は「進学者数」なので,1人で複数合格している生徒が
数字を押し上げているような事はありません.
協力している進学校の数が多くなく(現役データ未集計の高校もある模様です),
開成など本来欲しい学校のデータがなかなか得られないという泣き所はありますが,
まずはこの数字をご覧になって,インパクトを感じて頂ければと思います:
(A)難関国立10大学
東京,京都,北海道,東北,名古屋,大阪,九州(いわゆる「旧帝国大学」),
東京工業,一橋,神戸
(B)難関私立大学
早稲田,慶應義塾,上智,東京理科(いわゆる「早慶上理」),
明治,青山学院,立教,中央,法政(いわゆる「MARCH」)
高校名 A B 卒業数 (A+B)率
聖光学院 74 58 225 58.7
浅野 69 88 272 57.7
桜蔭 68 38 234 45.3
学芸大附 66 53 361 33.0
桐朋 53 72 323 38.7
浦和・県立 52 47 362 27.3
城北 50 95 370 39.1
千葉・県立 44 86 317 41.0
渋谷幕張 44 95 355 39.2
日比谷 44 82 333 37.8
女子学院 44 83 222 57.2
国立 42 74 322 36.0
(以上,前述「サンデー毎日」より,首都圏の学校を筆者が抜粋)
あえて端的に言いますと,上の表で「(A+B)率」と書いた割合「以外」の残りの人々は,
「MARCH未満に進学」or「浪人」の選択を迫られている可能性が高い,という事です.
もちろん,実際には例えば国公立大学をはじめとして
他の大学に「(偏差値ランク的にも)納得して」進学した人もいるはずです.
上の表で抜粋したのは首都圏の高校ですから,例えば
千葉,横浜国立,首都大学東京あたりですと,受験して合格した場合に
わざわざ「蹴って浪人」という人はそれほど多くないでしょう.
また,上の表では(A)に含まれる大学以外での国公立医学部医学科についての
進学者数が含まれていないので,医学部志向が強い進学校ではその分だけ
数字的には「不利」となる可能性があります.
しかしながら,国公立大学医学部医学科に「現役」で合格した生徒の数については,
15人以上いるのは桜蔭(30人)のみですので
(サンデー毎日増刊「完全版 高校の実力」2011年度版に所載の
「国公立大学医学部医学科現役合格者数ランキング」より),
他の高校の数字にはそれほど大きな影響は無いとみて差し支えないでしょう.
#ちなみに,桜蔭は東京医科歯科,千葉,横浜市立,筑波など
#上表の(A)に含まれない近隣の国公立医学部にも多く合格者を出しているので,
#その分は本来あらためて計算したいところです(今回は資料不足のため割愛).
もし,「(全ての)国公立大学現役合格者数」のデータが得られれば,
(A)の代わりにその数値を使って同様に計算する事で,
より感覚的にインパクトのある数字が得られるのではないかと思います.
当サイトとしては本来,
偏差値による大学の序列化や優劣感を煽る意向は無いのですが,
現実的に指導経験からしても,
「●●高校を出て,国公立・早慶上理MARCH未満の大学に入るっていうのはちょっと…」
というご意見を耳にする事はしばしばあります.
いずれにしても,「この大学なら納得して進学出来る」というラインについては,
受験学年に入る頃までには一応考えておきたい事であると思います.
高望みをする事も決して悪くないと思いますが,現実的に考えて,
例えば現役進学率が50%だったら,「納得して進学する」事になるかどうかは
「コインを1枚投げて表が出る確率」と同じだという事ですよ?
ですから,
「現役で行く」と言っている人は,
今すぐに10円玉を1枚用意して,投げてみて下さい.
裏が出たら浪人に回る可能性があります.…容易にお気づきの通り,ここまでくると,ほぼ「運」に近い話だという事です.
ちなみに,この「コインを投げて云々」の比喩は,また別の理由から
大学入試における感覚レベルでの真理をも表しているのですが,
根拠となる統計資料が現在手元に無いので,
今回はひとまず「印象」にとどめておいて頂ければ幸いです.
また,序列意識等とは別にしても,
「偏差値XX以上の大学に合格する事が,統計数値的にどれくらいの希少性をもつか」
といった観点については,計算すればまた興味深い数字が出てくるのですが,
記事が長くなりましたので,別の機会に述べたいと思います.